習作

100編を目標に空についての小説を書く。

夕焼け

「これで会議を終わります、気をつけ、礼」
「「「ありがとうございました」」」
今日の片付け当番は僕ら1年生の学級委員だ。視聴覚室に並べた椅子や机を折りたたみ、棚に戻す。男子は椅子を左腕に2つ、右腕に2つ、合わせて4つ抱えて運び、女子は一部の筋力に自信のある人を除いて両腕に1つづつ抱えて運ぶ。長机は2人1組で運んでいる。僕は力自慢がしたくて両脇に抱えて一度に2つ運んだ。が、流石に重くて机の後ろの端を地面に打ち付けてしまった。
「そんなに無理するからだよ笑」
いつの間にか両手で1つの椅子を持った凛花が後ろにいた。
「ごめんごめん、早く終わらせて部活行きたくて笑」
「田辺くん、足速いもんね。大会いつだっけ?」
「再来週の土曜日。もう近いからこんなことやってる場合じゃねぇんだけどな...」
「あはは。でも今日は片付け終わったあとも「残業」あるよ?」
「そうだった!うわぁ、まだまだ部活行けんわ...」
「そうだね〜笑」
なんでこいつは嬉しそうなんだ、僕は早く部活行きたいって言ってるじゃないか。
5クラスの学級委員が各々自分の出来る範囲内で努力してくれたおかげで片付けは5分程度で終わった。僕と凛花は1-4教室に戻った。みんな部活に行ったか、そうでなければ帰ったのだろう、誰もいなかった。
「今週も盛りだくさんだなぁ...」
明日の朝の会で会議で話し合ったことについてクラスに報告しなければならない、しかも今週はクラスごとに今月の目標を決めろという課題が出ている。これを僕ら2人の間では「残業」と呼んでいた。
「そうだね、ちゃちゃっと終わらせちゃおっか!」
「終わらせちゃおうって、お前いつもアイデア出さないで僕に任せっきりじゃん」
「てへ」
「てへ、じゃないんだよなぁ...まぁいいや、始めよう」
窓辺には夕日が暖かく差し込み、カーテンは風に揺れていた。教室の電灯をつけ忘れていた。

高校生になった今、夕方の教室に1人佇んでいて、ふと中学の凛花のことを思い出した。あいつ、元気かな。